大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)1985号 判決

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人福場吉夫の上告趣意第一点について。

所論引用の大審院判例は、所論の如く横領罪における不法領得の意思を、占有者自己に領得する意思に限定した趣旨のものでないことはその判文に照して明らかである。そして横領罪における不法領得の意思は、他人の物の占有者が権限なくして、その物に対し所有者でなければできないような処分行為をする意思をいうのであって、必らずしも占有者自己の利益取得を意図することを必要としないことは、夙に当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一四一二号、同二四年三月八日第三小法廷判決、判例集三巻三号二七六頁参照)。所論判例違反の論旨は理由がない。

同第二点について。

所論前段の包括一罪の主張は、原審で主張なくその判断を経ていない事柄であって上告理由として不適法であり、その後段は右包括一罪であることを前提としての量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。

被告人の上告趣意について。

右は事実誤認と量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。

また記録を調べても、本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田 克)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例